映画『築城せよ!』

しばらく前に見た映画『築城せよ!』がオススメである。

正直に言うと、映画のテーマに「まちづくり」と「ものづくり」が含まれているということで、意識としては仕事半分で見に行った。しかも、上映時間に間に合わず10分ほど遅れて入場する始末・・・。

ところが、見はじめた開始10分から、エンドロールが流れるまで、一度も時間を気にすることがないほど引き込まれてしまった。こんなに集中して見た映画は久しぶり、いや初めてかもしれない。

ストーリーは、うだつの上がらない市役所職員にとりついて甦った戦国武将の霊が、生前の悲願であった「築城」を行っていくというもの。
しかし、甦れるのは数日、資金もなければ部下も一緒に甦ったひとりだけ、という状況のなか、ダンボールで城を建てることを決意。築城の過程で、現代の地域住民の協力を得る際に、自分自身の至らなさに気づき、政(まつりごと)の本質に目覚める・・・「まちづくり」の観点からも十分に見ごたえのある内容である。

また、映画の撮影のために実際にダンボールで高さ25m、天守閣つきの城を作ったというのもすごい。本当に全部がダンボールなのかはわからないが、建築学部の学生という設定のヒロインが構造計算をしながら築城を指揮していく様は、「ものづくり」という点でワクワクしながら見られる内容である。

聞けば、もともと監督が数百万円程度の予算で自主制作し、サンフェルナンドバレー国際映画祭最優秀外国語映画賞を受賞した作品を体制を作ってリメイクしたらしい。そのリメイクに協力したのが、愛知工業大学。周年事業として資金やスタッフなどを多く提供したということだ。きっとセットの城の製作や、エキストラで参加した学生にとっては良い思い出になるだろう。周年行事のおカネの使い方としては素敵である。

惜しむらくは、映画の舞台となった愛知県を除き、ほとんどの県で1館のみの上映であること。偶然、ネット記事で見つけたが、宣伝も見たことがないため、ほとんどの人に知られずに上映が終わるのだろう。素晴らしい作品だけに悲しいことである。

とりあえずDVD化されたら絶対に購入して、いろんな人に勧めたい作品でした。